大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福島地方裁判所 昭和24年(行)36号 判決

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告は、別紙物件目録記載の農地につき被告福島県農地委員会が昭和二十三年九月二十七日附訴願人原告相手方平市農地委員会間の買収計画に対する訴願の裁決を取り消す。被告平市農地委員会は前記農地を買収計画より除外せよ。訴訟費用は被告等の負担とするとの判決を求め、その請求の原因として、別紙物件目録の表示の農地は、原告の所有であるが、被告平市農地委員会は、自作農創設特別措置法第三条第一項第一号の規定によつて、昭和二十三年六月一日その買収計画を公告したので、原告は、同年五月三十日異議の申立をしたが、同年六月十五日棄却されたので更に同月二十四日訴願を提起したところ、被告福島県農地委員会は、同年九月二十七日これを棄却する旨の裁決をし、右裁決書は昭和二十四年三月十六日原告に交付された。右裁決には、次のような違法がある。

(一)本件農地は、原告の住所地である石城郡神谷村農地委員会において自作農創設特別措置法第五条第六号の規定による承認を与えた農地である。

(二)被告福島県農地委員会は、訴願提起後、三箇月を経過した昭和二十三年九月二十七日に裁決をしているが、これは、同法第七条第五項の規定に違反する。

被告平市農地委員会の買収計画には、前記(一)記載の事実を無視した違法がある。

よつて、右裁決及び買収計画の取消を求めるため、本訴を提起した次第であると述べた。(立証省略)

被告等は、主文第一項同旨の判決を求め、原告主張の事実中、本件農地が原告の所有であること、被告平市農地委員会が原告主張の日、右農地の買収計画を公告したこと及び原告主張の各日時異議の申立、棄却の決定、訴願の申立、棄却の裁決書が原告に交付されたことは、これを認めるが、神谷村農地委員会が、原告主張のような承認を与えたことは不知、仮りに、右承認があつたとしても、かかる承認は、農地調整法施行令第十五条第一項本文の規定によつて、農地所在地の農地委員会が、これをなすべきものであるから、神谷村農地委員会の与えた右承認は、その効力がない。また自作農創設特別措置法第七条第五項の規定は、訓示規定であるから、同項所定の期間経過後にされた裁決でも違法ではない。よつて原告の本訴請求には応じられないと述べた。(立証省略)

理由

本件農地が原告の所有であること、被告平市農地委員会が、昭和二十三年六月一日右農地の買収計画を公告したこと、これに対し原告が、同年五月三十日異議の申立をしたが、同年六月十五日棄却されたこと及び原告が同年同月二十六日訴願を提起したが同年九月二十七日これを棄却する旨の裁決がされ、右裁決書が昭和二十四年三月十六日原告に交付されたことは、当事者間に争がない。

原告は本件農地については、原告の住所地である神谷村農地委員会から、自作農創設特別措置法第五条第六号の規定による承認を受けているから、これを無視して定めた被告平市農地委員会の本件買収計画及び被告福島県農地委員会の裁定は違法であると主張するが、同号にいわゆる市町村農地委員会の認定は、市町村委員会が当該市町村農地委員会の区域内に存する農地についてされた場合に限り有効なのであるから、仮りに、神谷村農地委員会が、その区域外に存する本件農地について右認定をしたとしても、それは法律上その効力がないものであり、従つて被告等が、これを無視したからとて本件買収計画及び裁定が違法となるわけはない。

原告は、本件裁定は、訴願提起後、三箇月を経過した後になされたものであるから、自作農創設特別措置法第七条第五項の規定に違反し違法であると主張するが、同項は訓示規定と解すべきものであるから、本件裁決がたとい、同項所定の期間経過後にされても、それだけの理由で、これを違法であるということはできない。

そうすると、本件裁決及び買収計画には、原告主張のような違法の点がないから、その取消を求める原告の本訴請求を失当と認めてこれを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条第九十五条を適用して、主文のように判決する。

(福島地方裁判所民事部)

(物件目録は省略する。)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例